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연구계획서 쓰는 법에 대해 설명해 놓은 글. 꼭 이대로 쓰라기 보다는 일본인들이 연구계획서에 대해 어떤 생각을 가지고 있는가를 알 수 있다는 점에서 도움이 많이 된다고 본다. 내용 자체도 훌륭하여 참고하기에 충분하다.

 
 
  研究論文・研究レポートを書くときは,普通,研究計画書(Research Design)を書くことから始める。研究計画書には,この論文・レポートにおける研究テーマは何なのか,これまでにどのような研究・文献があるのか,どのようなデータが必要なのか,データの入手可能性はどうか,どのような分析方法でそのテーマに取り組むのかなどを書くことになる。
 研究計画書は,実際に研究を始めたときに,研究者の指針として大変役に立つのだが,それが十分に詳しく書かれていればいるほど,より役立つものとなる。また、研究を進めるプロセスには人からの意見,コメントを受けることが不可欠であるが,そのためにもこの研究計画書は役に立つ。研究計画書が詳しく書かれていればいるほど,研究をよりよいものにするための具体的で適切なコメントがもらえる可能性が大きくなるといえよう。

 研究計画書は,普通,A4,ダブル・スペースで,12~20ぺージ位の分量で,次のような各節を含むものとなる。

1)問題の設定
2)仮説の提示
3)用語の定義
4)理論的な枠組みの記述
5)データの選択
6)仮説検証手続き
7)まとめ
8)文献目録

 繰り返しになるが,研究計画書を書く段階で研究の詳細が明確であればあるほど,その後の研究はよりいっそう容易になる。なぜなら,そのことによって研究の方向性がよりいっそう明確となり,研究上の様々な障害に対し前もって対策を考えることが出来るからだ。その意味で,研究計画書は,特定の問題に関する研究がどのように処理されていくかを記述した,一種のステップ式プログラムの集合体といってもよいだろう。
1 問題の設定(2~4ページ)

 この節では,次のような問いに対する答えが示されなくてはならない。

・研究者が興味深いと思った問題(テーマ)はなにか?
・その問題はどのような背景を持っているか?つまり,どのように他の政治的あるいは社会的な現象と関連しているか?
・その問題は,なぜ興味あるものなのか?また,なぜ研究の価値があるのか?
 例えば,
 ・その問題に対するこれまでの研究の結果はどのようなものがあるのか?
  ・どの程度の文献があるのか?
  ・それらの文献の答えは一貫したものなのか?
  ・対立する意見が存在するのか?
 あるいは,
 ・その問題に対して一般の人たちが持っている考え方はどのようなものなのか?
  ・その考え方に賛成なのか?反対なのか?

 冒頭で提示したテーマに関して,これまでの研究ではまだ解明されておらず,自分で調査することができる問題で,自分がこの論文・レポートの中で答えようと思っている問いを列挙する。これらの問いは,次節で提示する仮説と直接関連付けるようにすることが望ましい。
 つまりこの節では,取り組む研究の意義を読み手に理解させることが必要であり,説得力がなくてはならない。いきなりこの部分を書くことが難しいと思ったら,学術書や雑誌論文で,説得力のある「はじめに」,「緒言」,「序論」のコレクションをしてみることを勧める。そこには,計画書のこの節で述べなければならないことが書かれているはずである。問題の「書き方」を意識して論文を読み,部分的にサンプルを集めてみることにより,説明の仕方,文章表現も含め,コツがつかめてくるであろう。これは他の節についてもいえることである。
 節の最後に,研究論文の章立てを記すことにより,論文の骨格を明らかにする。
2 仮説の提示(1~2ページ)

 仮説にはあまり多くのテーマ(例えば,3つ以上の)が含まれていてはならない。全体で,少なくとも3つ以上,多くとも12を越えない範囲で仮説を設定するのが適切だろう。
 仮説はできるだけ簡潔で明白でなければいけない。要するに,専門用語を避け,特定の予想される関係について,わかりやすい言葉で記述するのである。
 仮説は,できるだけ「もし ~ならば,~する(である)」の形で述べるべきであり(例:「もしある2国が民主主義国同士であれば,それ以外の2国間よりも戦争をする可能性は少ない」),前節で列挙された研究のための問いと直接関連していなければならない。
 必要ならば,仮説についての説明やそれらが導かれる論理的根拠を示してもよい。
3 用語の定義(1~2ページ)

  これは研究計画の中でも大変重要な部分である。特に,社会科学的な研究において使われる言葉の多くが曖昧であるため,より重要な部分となる。
 用語の定義には概念的定義(conceptual definition)と操作的定義(operational definition)の2つがある。率直な意味を持っていないすべての単語は,両方の意味において定義されなくてはならない。概念的な定義なしではその言葉の意味を汲み取るような仕方で操作的な定義がなされたかどうか,誰にもわからないので,操作的定義または指標(indicators)のリストを示すだけでは不十分である。
 概念的定義は,一般に,「A(定義されるべき用語)はB(Aを含む一般的事物)のうちC(他とは違う特徴を持ったもの)である」という形で行なわれる。また,「A(その概念)はDではない」という限定の仕方も,理解の助けになる。
 例えば,「民主主義」を「人々が国家の統治に参加する政治体制であり,競争的な複数政党制,普通選挙の定期的な実施,そして言論・集会の自由によって特徴づけられる」というように定義することである。その際,「イデオロギーとしてのデモクラシーあるいはHeld(1987)が提案したデモクラティック・オートノミーのような包括的な民主主義概念の代わりに」というように限定すると,概念的定義の理解の助けになり,論旨の混乱を避けることができる。
 操作的定義は,例えば「民主主義」をどこで決めるのか,民主化の程度をどの面から測定するか(例えば「参加」の面から測定する)といった定義である。この操作的定義によってデータの選択が導き出される。(参考:星野英一 [1998] 「民主化と米国の対外援助」『琉球大学法文学部 政策科学・国際関係論集 創刊号』)
もちろん,すべての用語を定義することは不可能である。しかし,少なくとも,研究計画の中心をなす概念(例えば,仮説の中で使われている概念)については定義づけを行うべきだろう。
4 理論的な枠組みの記述(2~4ページ)

 一般に,社会科学的研究における「説明」は理論的な枠組みに依存している。何故ある変数とある変数との間に特定の関係があるのか或いはないのか,ということを我々に示してくれるのがその理論的な枠組みなのである。この理論的な枠組みとしては,システム分析やゲーム理論,認知に関する心理学的理論,意志決定論あるいは政策決定論,経済的人間の仮定などがある。
 これらの理論的な枠組みの中には,より限定的なモデルが含まれているのだが,それらの多くはいくつかの理論的な枠組みの組み合わせである場合が多い。(たとえば,システム理論には,均衡理論,コミュニケーション理論,そして構造機能主義の理論などがあり,それらはそれぞれの仕方で行動を説明しようとするのである。)
 たいていの場合,研究者はある特定の問題を分析するために,ある特定のモデルを選択する。したがって,そこで選択された枠組みの特徴やその理論的な前提について記述しなくてはならない。また,他のモデルと比べて何故その枠組みが選択されたのかを説明する必要もある。
 また,仮説を検証する際にこの枠組みがどのように議論の筋道を立ててくれるのか,を記述することも重要である。
5a データの選択(2~4ページ)

 研究のための資料は,データ・ソースがどのような性質の物でなければならないかを明確にしたのち,はじめて選ばれるべきである。どのような資料が含まれるのか?それはあなたの目的にあっているだろうか?前述したように,操作的定義を行うことにより,どのようなデータを集めたらいいのかが決まる。
 どのようなデータを選ぶかは分析の結果に影響を及ぼすので,単に「主たる情報源は政府の文書である」とか,「国連統計年鑑を利用する」と述べただけでは不十分だ。「この変数については,(1)一人当たり国民総生産,(2)平均余命を用いる。資料は,World Table(World Bank, 1995)を利用する」というように具体的に述べる必要がある。
 データ選びにあたっては,それが存在するのかどうか,入手可能かどうか,その情報の信頼性(reliability)はどうか,などを評価しなくてはならない。
 データが時間軸に関して比較可能かどうか,もこの文脈のなかで言及されるべき事柄である。研究において,単一のデータ・ソースを利用するのか,複数の資料にあたるのかも明らかにすべきである。どちらにせよ,それぞれに長所・短所があるので,そうした選択の理由を書き留めておくべきだろう。
 この節では,最終的にどのようなデータを選択したのかを,述べなくてはならない。どのようなサンプル選択の手法を採用したのかも詳しく書くことになる。(例えば,集計データを利用するなら,どの年・どの国を選ぶのか?調査結果を分析するのなら,どのようなサンプリング手法,どのような層化方法,どの程度のサンプル規模を選ぶのか?あるいは,内容分析を行なうにしても同様の問いに答えなくてはならないはずである。)また,データを入手する際の実際上の問題も論じるべきであり,データ入手に妥協が必要になる場面もあるかもしれない。
5b データ収集のレベルと指標(indicators)の設定(1~2ページ)

 仮説に含まれている用語を操作化した変数として使われる指標(indicators)が,ここに列挙される。研究には再現性を要されるので,このリストは,研究を立案した本人でなくても同じようにこの研究が行えるように,必要なものの全てが列挙されなくてはならない。
 もしある変数が結合されたものであるなら,このリストには必要なあらゆる指標が列挙されなくてはならない。例えばそれが国家間の合意のレベルとして操作化されたものなら,国連における投票や特定分野の対外政策といった,その合意のレベルを示す必要な指標が列挙されることになる。
 データ収集の尺度(mode)もまたここで書き留めるべきだ。数量的な分析をする場合,データの尺度が二値的なもの(nominal)なのか,順位尺度(ordinal)なのか,あるいは間隔尺度(interval)なのか,は重要である。
6 仮説検証の手続き(1~2ページ)

 資料を分析し,結果を導くために,どのようなデータ分析の手法を利用するのか,明らかにしなくてはならない。
 まず,考えなくてはならないことは,他の手法と比較してどの手法がもっとも適切だと言えるのかということと,もっとも望ましいと思われる手法を使う際に直面しなくてはならないかもしれない問題は何なのかということだ。 データは選ばれた方法の仮定に抵触しないだろうか?この手法は,提示した仮説について結論を導くのに役立つだろうか?具体的には,どのようにその分析が遂行されるのだろうか?
 この節の内容がまさに研究の核心であるため,研究計画を書き上げる際にここが最も難しい部分となることが多い。
 最後に,分析手法それ自身について簡単に述べ,それをどのようにあなたのデータに適用するのか示さなければならない。仮説が検証されたと言うためには,どの程度の統計的な関係が見出されなければならないか,も記すことが必要である。
7 まとめ(1~2段落)

 選択された仮説が何故重要なのか,それらは選択された枠組みの中でどのように検証されるのか,そしてこの研究からどのような学問的な貢献が期待されるのか,を1~2段落にまとめる。
8 文献目録

 要求された書式にしたがって,選択したテーマに直接関わりのあるこれまでの研究文献をできるかぎり網羅し,仮説検証に必要な資料の所在をできるかぎり明記すること。利用する統計手法についての簡潔な解説書や,直接ではないが関連すると思われる文献についても,記載してかまわない。
 文献目録の書式には,いくつものタイプがあるが,指導教官と相談しながら,自分のテーマに近い分野で良く使われている書式を一つ選び,一貫してその書式に従うこと。「B 文献目録の書式」はそのようなタイプの一例であるが,実際には「D 参考文献」に挙げてある本を参照すること。
 文献目録は論文が仕上がったときに完成すればよい「附録」ではない。文献目録は研究の範囲,レベルなどを示すものであるため,人からコメントをもらう時など研究内容の前に目をとおされる可能性の高い部分である。このようなことを意識して,研究計画の時点からこの部分は整理しておく必要がある。
B 参考文献の書式
1 単行本

 著者・編者名(出版年)『本のタイトル』出版社名。
例:竹田青嗣(1993)『はじめての現象学』海鳥社。
2 単行本の中の論文

 著者名(出版年)「論文のタイトル」編者名『本のタイトル』出版社名。
例:星野英一(1993)「冷戦後の国際システムとアジア」島袋邦・我部政明編
『ポスト冷戦と沖縄』ひるぎ社。
3 雑誌論文

 著者名(出版年)「論文のタイトル」『雑誌のタイトル』巻号数,頁数。
例:中村尚司(1993)「会社中心社会と外国人労働者」『オルタ』5号
(1993年夏),88-93頁
4 新聞記事

 「記事のタイトル」『新聞のタイトル』発行年月日。
 または
 著者名(発行年)「記事のタイトル」『新聞のタイトル』発行月日。
例:「比重軽い国際化予算」『朝日新聞』1993年6月11日朝刊。
C その他の論文の形式

私は,ここで,仮説検証型の研究だけを勧めているわけではない。他にも,論文
の形式として,花井・若松(1997)では,論証型,描写型,比較型,解説型,
発掘型,人物型があげられている。また,森口(1999)は論文のタイプを研究
論文,展望論文,解説論文,政策提言型論文の4つに分類している。
 自分の論文がどの形式になるのか,あるいは近いのかを考え,論文を「内容」
ではなく,「形式」「書き方」の面から読んでみることは役に立つ。例えば,実
際に仮説検証型の論文を上記のAで挙げた項目にそって分析してみると,論文の
手順が明確になり,研究計画書を書く際の助けになる。これは個人でやってもよ
いが,学生,教員とゼミ形式で行うと効果的である。
D 参考文献

論文を書く際に手元において参考にするのはもちろんだが,研究に取り組む前
に,下記のような文献を一度通読することが望ましい。

斉藤孝(1998)『学術論文の技法 第2版』日本エディタースクール出版部。
櫻井雅夫(1998)『レポート・論文の書き方 上級』慶応義塾大学出版会。
中尾浩・伊藤直哉(1998)『Windows 95版 人文系論文作法』夏目書房。
中尾浩・伊藤直哉・逸見龍生(1995)『マッキントッシュによる人文系論文作法』夏目書房。
花井等・若松篤(1997)『論文の書き方マニュアル』有斐閣アルマ。
古郡廷治(1997)『論文・レポートのまとめ方』ちくま新書。
森口親司(1999)「光る論文・レポートはこう書く」『経済セミナー』第537号(1999年10月)。
吉田健正(1997)『大学生と大学院生のためのレポート・論文の書き方』ナカニシヤ出版。

木下是雄(1981)『理科系の作文技術』中公新書。
杉原厚吉(1994)『理科系のための英作文法』中公新書。
妹尾堅一郎(1999)『研究計画書の考え方』ダイアモンド社。
本多勝一(1982)『日本語の作文技術』朝日新聞社。

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大学生における精神的健康と親子関係との関連
―抑うつ傾向と攻撃性について―
杉田貴行
問題と目的

近年“キレやすい生徒”という言葉に象徴されるような犯罪行為や暴力行為など、学生の問題に社会的関心が集まっている。筆者は、資格専門予備校の相談室や その他の場面で大学生に触れる機会を多く持ったことから、相談機関へ来談しない大学生でも,深い悩みを抱えていることを実感し,大学生の精神的健康につい て興味を抱いた。
従来、子どもの精神的健康の研究では、親子関係、母子関係や父子関係が対象となることが多かった。しかしMinuchin(1996)は、家族を夫婦・親 子・同胞などの“サブシステム”の相互関係によって成り立つ、1つの有機的な“家族システム”と捉えることに注目している。この理論に立つと,家族関係の もう一つの重要な構成要素である父母関係を含めた、大学生の精神的健康についての実証的研究は有意義である。
このように、子どもの精神的健康と父母関係についての研究では、これまで両者間に関連性が認められているものの、因果関係については不明な点が多い。近年では,両者間に媒介変数を考慮することで因果関係を見出そうとする傾向がある
さて、神経症性うつ病( neurotic depression )とは、内因性でも体験反応性でもないうつ病の一つで、抑圧された神経症性葛藤に原因のもとめられるうつ病。内容的には、抑うつ神経症 (depressive Neurose)とほとんど変わらない。幼児期に葛藤状況があり、それが多少とも抑圧されて心的体験の加工に影響を及ぼし、病者はこの葛藤状況に関連した 一連の観念ないしは状況と対決できないため悲哀感を生じ、うつ状態を示す。多くの場合病者の親子関係が障害されており、やさしさ、庇護性、信頼性、安全性 などの欠如、あからさまな拒絶、厳格すぎること、残忍、粗野、放任などがみられる。また性のタブー視、不安を掻き立てるような甘やかし教育、家族間の冷た い戦争などが、抑うつ的神経症的発展を生ぜしめやすい。はっきりした抑うつ状態が現われるまでに、一連の神経症的橋渡し症状(精神的には制止、自己不確実 感、不安、根気のなさ、精神身体的には吃り、爪噛み、夜驚症、夜尿など)が先行し、それは幼児期まで遡及しうる(幼児神経症)。ときどき機能的器官障害へ の移行もみられる。抑うつ状態の分析から葛藤状態にまで遡っていくと、病者においては、飽くなき依存欲求と過代償的に厳しい拒絶が並存していることがわか り、病者の人格的努力や体験にはっきりした分裂がみられる。本病における抑うつ気分は、外部の状況によって容易に影響され、そのため、状態像はまとまりの 無い曖昧なものとなり、病像全体が内因性うつ病のそれのようなまとまりをもたない。発病の契機としては思うようにものごとがいかないとか、なにか新しく企 て、試みねばならないとか、試験を受けねばならないとか、なにか無理をして努力せねばならない状況、または生物学的危機がある。うち克ちえない困難に遭う ごとにうつ状態は悪化する。それゆえ経過は動揺的でなおりにくい。自覚的には、気分の変動は自我と異質的に感じられ、病者は途方に暮れ絶え間ない気分の上 下に悩む。年齢的には十代後半から二十代半ばにかけての若年群と、初老期・更年期になって生じる更年群がある。
これらは要するに神経症性葛藤に原因があるとされるうつ病の意味での神経症性うつ病であるが、しばしば概念上心因性うつ病、反応性うつ病と厳密に区別され ず使用される。なお米英圏では、神経症性うつ病というとき、精神病性うつ病に対置して、精神病レベルに至らず神経症レベルに止まる軽症のうつ病をさすこと がある。
以上より本研究では,大学生の精神的健康の指標として「抑うつ傾向」と「攻撃性」を取り上げたい。また親子関係を媒介変数として取り上げることにする。そ して「子どもが認知した父母関係が、子どもの母子・父子関係の認知に影響し、それらを媒介として子どもの抑うつ傾向に影響するとすると仮定する。また子ど もの母子・父子関係の認知が直接,または抑うつ傾向を媒介として,攻撃性に影響を与える」という仮説についても検討する。

方法

調査対象は,A府B大学の生徒200名(男子100名,女子100名)。用いた質問紙は,抑うつ傾向を測定するCES-D Scale日本版(20項目),攻撃性を測定する日本版Buss-Perry攻撃性質問紙(24項目)、母子・父子関係の認知を測定する母子関係尺度・父 子関係尺度(各15項目)、父母関係の認知を測定する父母関係尺度(16項目)、合計200名分の調査結果を分析に使用する。前述の仮説に基づき,次の2 つの因果モデルを構築しパス解析を行う。
(1)親子関係が子どもである大学生の抑うつ傾向にどのような影響を与えるのかを明らかにすめために、父母関係が、母子・父子関係にそれぞれ影響を与え、 それらを媒介として抑うつ傾向に影響を与えるモデルがなりたつかどうかを確認する。(2)父母関係が、母子・父子関係に影響を与え、これらを媒介として抑 うつ傾向と攻撃性に影響を与えているかどうか。また同時に母子・父子関係が抑うつ傾向を媒介にして攻撃性に影響を与えているモデルが存在するかどうかも確 認する。これら2つのモデルを検証する。

議論

父母関係と子どもである大学生の精神的健康との関連メカニズムを検討した結果,親子関係を媒介変数として考慮することでパスモデルが適合するだろうか。大 学生が父母関係を良好であると評価すると,自分と両親との関係も良好なものであると評価する傾向が明らかになるだろう。その結果、家族に対して信頼や安心 感を抱くことができ、抑うつ傾向や攻撃性が抑えられると考えられる。ここで注目すべきことは、親子関係のうち、特に父子関係が重要な意味を持つことであ る。更に女子においては、父子関係だけでなく母子関係も重要な意味を持っているだろう。
本研究では大学生の認知の側面に注目したことから,Minuchin(1996)の外的な対象関係だけでなく、父母関係や親子関係の評価などの内的対象関係が、子どもである大学生の精神的健康に影響を与えていることが明らかになることだろう。
以上から大学生の抑うつ・攻撃性へ対応する際、子どもである大学生が父母関係をどう認知・評価しているかに注目することが有効と考えられる。臨床場面で は、大学生の抑うつや攻撃性に対応するだけでなく、父母関係や親子(特に父子)関係の認知をアセスメントすることの重要性を示唆している。特に大学生女子 のクライエントと関わる際は、母子関係の認知についてもアセスメントするとより有効な情報が得られると推測された。これらの認知が不良であるなら、本人へ の対応と並行して、親への働きかけも有効となると考えられる。本知見は、今後の学生指導や大学生の両親への啓蒙活動においても援用可能性があるであろう。


2007/12/03 11:46 2007/12/03 11:46